データ保持ルールを使用すると、組織のコンプライアンスや規制に備えて Google Workspace のデータの保存と削除をコントロールすることができます。
デフォルトでは、Google Workspace のデータはユーザーまたは管理者によって削除されるまで、そのユーザー アカウントに残ります。組織でデータの保持をより細かくコントロールする必要がある場合は、Google Vault で保持ルールを設定できます。保持ルールにより、データの保存方法と保存期間が整理され、不要になったデータはパージされます。
保持ルールについて
Vault では、保持ルールを使用して次のことができます。
- 必要な期間データを保管する - 必要な期間にわたってデータを保持するようにルールを設定できます。ユーザーがメッセージやファイルを削除したりゴミ箱を空にしたりしても、データは保持されます。
- 不要になったデータを削除する - 一定期間経過した後にデータを削除するように Vault でスケジュールを設定できます。保持期間が終了すると、データはユーザー アカウントから自動的に削除され、Google のすべてのシステムからパージされます(訴訟のための記録保持(リティゲーション ホールド)の対象となっているデータはパージされません)。保持期間が過ぎたデータの削除にかかる時間は、サービスによって異なります。詳しくは、すべての保持ルールの期限が切れた後も Vault にデータが残る場合がある(後述)をご覧ください。
保持ルールの種類
デフォルトの保持ルール
サービスのすべてのデータを一定期間にわたって保持する必要がある場合は、デフォルトの保持ルールを設定します。デフォルトのルールがデータに適用されるのは、カスタムルールまたは記録保持が適用されていない場合に限られます。デフォルトの保持ルールを特定のアカウントまたは期間にのみ適用することはできません。また、デフォルトの保持ルールはサービスごとに 1 つだけ設定できます。
カスタム保持ルール
特定のデータを一定期間保持する必要がある場合は、カスタム保持ルールを設定します。サービスに応じた条件とキーワードで、データを指定できます。
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Gmail、Google グループ - 組織部門、期間、特定の検索キーワードで設定できます。
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Google ドライブ、Meet、Google サイト - 組織部門で設定できます。また、最終更新日(情報の鮮度を確保するため)、作成日(コンプライアンス要件に対応するため)、ゴミ箱に移動した日、ドライブラベルの日付フィールドに基づいて期限を定義できます。
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Google Chat - 個々の組織部門、または組織内のすべての Chat スペースで設定できます。
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Google カレンダー - 組織部門で設定し、予定の終了日に基づいて期限を定義することができます。詳しくは、保持期間についてをご覧ください。
- Google Workspace 版 Google Voice - 組織部門とデータの種類で設定できます。
設定できるカスタムルールの数に制限はありません。データは、期限が最も後のルールに基づいて保持されます。ドライブの場合、ゴミ箱内のドライブ アイテムに複数の保持ルールが適用される場合は、moved-to-trash(ゴミ箱に移動した日)のルールが最優先されます。
保持に関する重要な情報
記録保持と保持ルールはどちらも Vault でデータを保持しますが、以下のような重要な違いがあります。
記録保持(リティゲーション ホールド) | 保持ルール | |
---|---|---|
用途 |
通常、調査または法的要件への対応のために作成されます。 |
データの保管期間を事前に指定するために使用します。 |
対象 | 記録保持は以下に適用されます。
|
保持ルールは以下に適用されます。
注: 個々のアカウントには、キーワードに一致する場合のみ適用できます。 |
保持期間 |
記録保持が削除されるまで、データが無期限に保持されます。 |
指定した期間(一定の日数または無期限)、データが保持されます。 |
優先度 |
記録保持は保持ルールよりも優先されます。記録保持が解除されたデータには直ちに保持ルールが適用されます。 |
記録保持によって保持されているデータには、その記録保持が解除されるまで、保持ルールは適用されません。 カスタムルールは常にデフォルトのルールよりも優先されます(デフォルトのルールの保持期間の方が長い場合でも同様です)。適用されている最後の保持ルールの保管期間が過ぎると、データは Google の本番環境システムから削除されます。 |
アクセス |
案件へのアクセス権がある Vault ユーザーのみが、記録保持対象のユーザーとデータを確認できます。 |
保持ルール権限のある Vault ユーザーのみが保持ルールを管理できます。 |
Vault は、Vault 対応の Google サービスと完全に統合されているため、独立したアーカイブはありません。
保持ルールがメッセージやファイルに適用されている場合、そのアイテムはユーザーが削除対象としてマークしていない場合でもサービスから削除されます。
たとえば、Gmail のメールを 365 日間保持するデフォルトの保持ルールを作成し、カスタムルールや記録保持を設定していないとします。1 年以上経過したすべてのメールは Vault で削除されます。
- Gmail、Google グループ - 保持期間の開始時期は、メッセージの送信日または受信日です。
- Google ドライブ、Google Meet、Google サイト - 保持期間の開始時期は、保持ルールの設定によって異なり、次のようになります。
- アイテムの作成時
- アイテムの最終更新時
- アイテムをゴミ箱に移動したとき
- ドライブのラベルの条件に日付フィールドが設定されている場合、ドライブのラベルの日付フィールドに設定された値
- Chat - 保持期間の開始時期は、メッセージの送信日です。ユーザーがメッセージを編集または削除しても、保持期間の開始時期は変わりません。
- カレンダー - 予定が終了すると保持期間が開始されます。詳しくは、保持期間についてをご覧ください。
- Google Workspace 版 Voice:
- テキスト メッセージ - 保持期間の開始時期は、メッセージが送信された日の午後 11 時 59 分(UTC-7)です。
- ボイスメールと音声文字変換データ - 保持期間の開始時期は、ボイスメールが作成された日の午後 11 時 59 分(UTC-7)です。
- 通話履歴 - 保持期間の開始時期は、通話を発信または受信した日の午後 11 時 59 分(UTC-7)です。
デフォルトの保持期間が経過すると、次に該当するメッセージやファイルのみがパージされます。
- カスタム保持ルールによって保持されていないメッセージやファイル。データは常に保持期間が最も長いカスタムルールに基づいて保持されます。カスタム保持ルールは常にデフォルトの保持ルールよりも優先されます(カスタム保持ルールの保持期間がデフォルトの保持ルールより短い場合も同様です)。
- 記録保持(リティゲーション ホールド)の対象ではないメッセージやファイル。記録保持を解除すると、保持ルールが適用されます。
保持ルールでデータのパージが設定されている場合でも、完全に削除されたデータまたは保持期間を過ぎたデータを Google のシステムから削除するバックグラウンド プロセスの動作上、パージされるまでの 30 日間ほどは Vault 内でデータを利用できるようになっています。
メール
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すべての保持ルールの期間が過ぎると、Gmail 内のメッセージや Google グループに投稿されたメッセージは、ユーザーの画面から削除されます(この削除処理には数時間から数日かかる場合があります)。削除後 30 日間ほどは、これらのメッセージに対して Vault 管理者が検索、書き出し、記録保持の設定を行えます。30 日が経過すると、これらのメッセージに管理者がアクセスすることはできなくなります。
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保持期間満了まで 30 日を切ってからユーザーやグループ管理者がメッセージを削除した場合、これらは「最長 30 日間」の要件を満たすために必要な期間だけ保持されます。たとえば、保持期間満了の 20 日前にユーザーがメッセージを削除してゴミ箱を空にした場合、管理者は保持期間満了後 10 日間、削除されたメッセージを Vault で検索できます。期間満了後 10 日が経過すると、管理者もメッセージにアクセスできなくなります。
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保持期間満了まで 30 日以上ある時点で Gmail メッセージが削除された場合、期間満了時に直ちにパージされ、管理者もメッセージにアクセスできなくなります。
Gmail での保持ルールの動作の例については、Gmail の保持ルールの例とその影響をご覧ください。
ドライブ内のアイテム
- すべての保持ルールの期間が過ぎてからユーザーのドライブ内のアイテムとサイトがドライブから削除されるまで、最長で 15 日ほどかかります。アイテムがドライブから削除され、保持ルールまたは記録保持の対象外になった場合、そのアイテムはすぐに Vault で利用できなくなります。ファイルを削除してから 25 日未満であれば、管理者がファイルを復元できる場合があります。
- ユーザーが削除してゴミ箱から空にしたアイテムとサイトは、保持期間を延長する保持ルールまたは記録保持がない場合、すぐに Vault で利用できなくなります。ファイルを削除してから 25 日未満であれば、管理者がファイルを復元できる場合があります。
Chat のメッセージ
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Chat のメッセージは、ユーザーまたは保持ルールによって会話またはスペースから削除された後、30 日間保持されます。パージ処理は 30 日目に開始されますが、パージされるメッセージの数によっては、完了までに数日かかる場合があります。
カレンダーの予定
- カレンダーの予定は、ユーザーまたは保持ルールによって予定が削除されてから 30 日間保持されます。Vault で予定を検索、エクスポートできます。
Voice のデータ
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Voice のテキスト メッセージ、ボイスメールとその音声文字変換データ、通話履歴は、保持期限の 30 日後までにパージされ、管理者もアクセスできなくなります。
Google サービスの中にはデータがドライブに保存されるものがあります。このデータには、次のようにドライブの保持ルールが適用されます。
サービス | 保持 |
---|---|
Jamboard | Vault ではユーザーのドライブに保存された Jam が保持され、ドライブの保持ルールが適用されます。未保存の Jam は Jamboard セッションの終了時に破棄され、Vault では使用できません。 |
Google Meet | Meet の録画、Gemini によって作成されたメモ、Meet 内のチャット、Q&A、アンケートのログには、デフォルトでドライブの保持ルールが適用されます。
Meet の録画をドライブの他のアイテムとは異なる方法で管理するには、Meet の保持ルールを設定します。Meet の保持ルールが有効になっている場合、ドライブの保持ルールは Meet の録画に適用されません。 |
Google サイト | Google サイトにはデフォルトでサイトの保持ルールが適用されます。 サイトをドライブの他のアイテムとは異なる方法で保持するには、Google サイトの保持ルールを設定します。サイトの保持ルールが有効になっている場合、ドライブの保持ルールはサイトに適用されません。 ドライブの他のアイテムと同様にサイトを保持するには、保持ルールを変更することで、ドライブのルールでサイトが保持されるように設定できます。 |
既存の保持ルールの変更は注意して行ってください。ユーザーが 30 日以上前に削除した保護されていないデータは、サービスによって直ちにパージされることがあります。
子組織部門は、親組織部門からカスタム保持ルールを継承します。
これらの継承されたカスタムルールは、カスタム保持ルールの設定後に子組織部門が作成された場合を含め、すべての子組織部門に適用されます。
次に例を示します。
example.com
はルート組織部門で、Gmail のデフォルトの保持期間は 2 年です。
example.com_US
では、Gmail のカスタム保持ルールが 11 年になっています。このルールがメインルールとして適用されます。
example.com_US\Employees
は子組織部門であり、親組織部門(example.com_US
)から 11 年のカスタム保持ルールを継承します。カスタムルールがメインルールとして適用されます。このルールは、example.com_US
にカスタム保持ルールが設定された後に example.com_US\Employees
が作成された場合でも適用されます。